2021.04.10

–土地活用–【競争しない賃貸住宅 vol. 3】

◎コラム 設計事務所と考える賃貸住宅 

▪レンタブル比MAXだけで大丈夫か
快適な共用部や居住性は数字に表れないが、生活の余裕を感じさせる付加価値となる

夕方帰宅時に住人を迎える家の玄関のようなエントランス。





—建物の外観は確かに重要だが

 賃貸集合住宅の計画では、賃貸部の面積が最大でどのくらいになるのかを考えますが、高めに設定した賃貸料に対して割安感を感じてもらう為にはレンタブル比を最大にするだけではうまくいかないこともあります。
 廊下、エントランス、植栽、屋上利用など共用部がどれだけ豊かであるかは不動産サイト上の検索時には見えてきませんし、利回り上予算をなるべく押さえることを考えると、共用部などの充実は後回しになりがちです。しかし内見に訪れた人がデーターを見て想像していた居室イメージ以上に建物全体から良いイメージを感じることは成約を決める理由になり得るでしょう。
 居室と共用部の関係をうまく設計することで付加価値的なスペースになったり、入居者同士のゆるやかなミュニティを促すことも可能で、賃貸全体の雰囲気を良くすることになります。
 これはレンタブル比を下げて共用部を多く取ろうという提案をしている訳ではありません。共用部を無味乾燥な場所にすることは、せっかくの居住性の向上や差別化のツールを手放してしまうこともある、ということです。もちろん、建設予算、レンタブル比、賃料設定、様々な要素をどのバランスで設計していくかは個々のケースによって違います。その土地や条件に最適な計画で共用部等をうまく生かすことができれば選ばれる賃貸を造るための一要素になり得ます。

東京都日野市の賃貸集合住宅。バルコニーと連続した土間空間が共用部から繋がる。テナント+賃貸





◎コラム 設計事務所と考える賃貸住宅 
【競争しない賃貸住宅 vol.1】  ▪建物は環境をつくることができる
【競争しない賃貸住宅 vol.2】  ▪個性的な外観デザインは本当に集客効果があるか
【競争しない賃貸住宅 vol.3】  ▪レンタブル比MAXだけで大丈夫か
【競争しない賃貸住宅 vol.4】  ▪ずっと新築のまま、という建物はありえないなら…
【競争しない賃貸住宅 vol.5】  ▪本当の差別化とはなんだろう